夜の嵐
もう何年も前
台風の激しい雨の夜
僕とあの人は電話で話していた
もう１時間以上も
話しただろうか
話はやがて
またおなじところに戻ってきて
会話が途切れた
僕はあの人が好きだった
あの人は
僕を好きというほどじゃなかった
僕は結婚を考えたかった
あの人は
結婚までとても考えられなかった
僕はあの人と一緒にいたかった
あの人はやさしすぎて
自分から
さよならを言い出せなかった
会話が途切れたとき
ぼくは心を決めた
僕たちどうやら別れたほうがいいね
しぼり出すようにこのひとことを
言い終わったとき
あの人は何も言わなかった
ただ
ほっとしたような空気が
電話から伝わって来る気がした
未明の激しい風と雨が
またあの夜の記憶を呼び覚まして
僕をおびえさせる
あれ以来
夜の激しい雨と風の音は
悲しい別れを予感させるのだ
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