花火大会
遠くから響く
得体の知れぬ響きに誘われて
ベランダに立つ
夏の終わりの湿った空気が
身体にまとわりつく
街の光を鈍く反射した
赤鉛色の雲の間を
なまっちろい半月が走る
繰り返し響く音は
ここからならわかる
花火の音だ
はるか遠く深く
真っ暗な西の空から響いてくる
姿の見えぬ花火の音だ
昔一度だけあなたが行こうと言った
あなたの隣町の花火大会
けれどあのころの二人では
行けるはずの無かった花火大会
今年もあったんだ
真っ暗な空の向こうに
花火の明かりに映える
あなたの笑顔が見える気がする
どうして聞こえてしまったのかな
今日まで
他のどの花火の音も聞こえなかったのに
寂しくて悲しくて
部屋に逃げ込んだのに
締め切った部屋にもはっきりと響いてくる
早く終われと念じながら
終わりが来る切なさが胸を切る
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